綾城の戯言。

ラノベや将棋など。好きなことを綴っていきます。

藤井聡太、満を持して。

ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局。

先手の挑戦者藤井聡太七段が157手で渡辺明棋聖を下し、タイトル戦の初挑戦を白星で飾った。

 

 

プロ入りから3年8ヶ月。

 

第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局は東京将棋会館特別対局室にて行われた。

 

挑戦者である藤井七段は、4日前に永瀬二冠を100手で下し、本局への挑戦権を獲得。史上最年少でのタイトル戦挑戦記録を4日更新しての登場だ。

対する渡辺棋聖は、この棋聖を含む棋王と王将の三冠保持者で、明後日10日開幕の名人戦の挑戦者でもある。

 

タイトル初戦にしては珍しく将棋会館での対局となった本局は、場馴れしていない挑戦者にとっては若干の有利か。

また、本棋聖戦は持ち時間4時間で短く一日制のため、封じ手や時間配分の心配も少なくてすむだろう。

 

はじめてのタイトル戦。

 

立会人の深浦九段はタイトル戦初登場の藤井七段の着物所作などのサポートをしようとしていたそうだ。

しかし、藤井七段はスーツ姿での登場。

挑戦決定から中三日というスケジュールもあって、用意が間に合わなかったのかもしれない。

 

この五番勝負は、中学生でプロ入りした棋士同士の対局になった。

中学生でプロ入りした棋士羽生善治九段や加藤一二三九段など5人しかいないのだ。

藤井七段が今後将棋界を牽引いていくことを期待したい。

 

まずは、先手を。

 

第1局である本局は対局前に振り駒が行われ、挑戦者の藤井七段の先手となった。

 

藤井聡太七段△渡辺明棋聖

 

9時に立会人の深浦九段の声で対局が開始、藤井七段の初手はいつもの「お茶」。続いて7六歩と突いた。

藤井七段は先手での角換わりの採用率が高く、有力候補とされていが、矢倉を採用。

相矢倉での駒組が進んでいく。

 

 

 

中盤、後手の歩切れが効き、若干の先手持ちで仕掛けが始まり、力戦調に。

渡辺棋聖が歩切れを解消する間に、藤井七段は端からの攻めを進めたのだ。

普段は、藤井七段自身が歩切れに悩まされていることが多い気がするが、本譜は後手の歩切れを咎めて優位に運んでいた。

 

92手目4六金。これが先手の攻め駒である飛車と角の両取りになる手だった。

しかし、藤井七段はノータイムで1三飛成と踏み込み、そこから互いに捻り合いになる。

藤井七段の攻めに渡辺棋聖も反撃の手で応戦し、大混戦の終盤になった。

 

 

詰むや詰まざるやの終盤戦で両者一分将棋に。

渡辺棋聖が先手玉を追い回す形になるも、中段玉を捕まえることが出来ない。

先手が龍の効きに桂馬を合駒し、後手玉に逆王手をかけた、157手目2四桂をもって渡辺棋聖の投了となった。

 

藤井聡太七段のタイトル初挑戦、初戦は先手番を無事に勝利。五番勝負を一戦一勝と先勝で飾った。

相矢倉の力戦形で渡辺三冠を相手に力で勝利した藤井七段。

第2局以降の活躍、和服姿を見ることができるかにも期待が高まる。

果たして渡辺三冠相手に後手番で切り崩すことができるのか。

是非、注目したい。

 

彼は人か、星人か。

 

彼は、攻め手が見える局面で、じっと溜める手を指す場面をよく目にする。

若手の棋士は攻め将棋気質が多いが、藤井七段や永瀬二冠のようにじっと堪えることが大切なのかもしれない。

また、踏み込みのタイミングや、自玉の見切りの強いこと。天性の勝負勘か、圧倒的な深さの読みか。

現代将棋の第一人者、渡辺明三冠相手に本譜のような矢倉の名局を繰り広げたことは、それだけの意味を持つだろう。 

 

果たして彼は棋士人生何十年目なのか、何周目なのか。

それとも、将棋星人なのか。